総入れ歯を作成するまでのプロセスと選べる素材や種類

全ての歯を失うことがあったとしても、総入れ歯を装着することで生活の質を取り戻すことが可能です。様々な素材や種類が増えており、予算や好みに合わせて選択することが可能となりました。

虫歯や欠損などで歯を失ってしまった場合は二度と元に戻ることはありませんが、その先も食事をし会話をするなどの生活は続きます。そこで総入れ歯を装着することで補うことが可能で、生活の質をリカバリーできる手段があります。それを実現するためには質の高い総入れ歯を作成することが必要ですが、多くのクリニックには患者さんひとりひとりにマッチした総入れ歯を作り出せるプロセスが用意されています。

質の高い生活のために総合的な完成度が求められる

総入れ歯

総入れ歯は失われた歯を補うだけではなく、質の高い生活を実現するために総合的な完成度が求められます。しっかりと歯茎にフィットして簡単に外れないようにするのはもちろんのこと、食べ物を噛んだ感触を的確に歯茎へと伝え、口腔内に入った飲み物や食べ物の温度を伝えるのも大切です。口の周辺には様々な組織が張り巡らされており、会話や表情にも大きな影響を与えます。

このように総入れ歯では歯の健全性だけではなく、様々な要素を勘案して高い精度で作成する必要があります。ひとりひとり筋肉の動きや噛み方の癖などに違いがあることから、総合的な判断が求められるシーンです。総入れ歯は上顎よりも下顎の方が作成は難しく、その要因となっているのが舌の存在です。

舌は食事をする時だけではなく言葉を発音する際にも動き続けることから、適切なデザインとしっかりと固定するという両方を実現しなければなりません。昨今で導入が進んでいる3Dスキャナーなどの最新のテクノロジーと主治医の適切な診断、そして歯科技工士の技術と経験が融合し、より精度の高い総入れ歯の作成が可能となりました。それらの連携により高品質な総入れ歯が完成し、自分で噛む喜びを取り戻すことができます。その一方で従来型の総入れ歯だけでしっかりと固定するには限界があり、歯茎と総入れ歯の中に医療用のマグネットを埋め込んでよりフィット感を高めたタイプも登場しました。総入れ歯で採用する素材や工法、技術は常に進化をし、患者さんの生活の質を高めるために総合的な完成度を目指し続けています。

質の高い総入れ歯を作る難易度の分類

総入れ歯

総入れ歯を作成する際には患者さんの状態を難易度の分類として診断し、治療方法や総入れ歯の形式などを選択するための重要な判断材料となります。下顎の場合はレントゲン撮影を行うことで骨の高さや厚みを測定して難易度の分離を行います。歯がどのような理由で失われたのか、また失われてからどれぐらいの期間を経過しているのかによって顎の形状は大きく異なり、総入れ歯を支えるための歯茎の形状にも影響を与えます。

期間が長いほど歯茎が痩せて面積が減少することで、総入れ歯に触れる面が少なくなることから作成時には配慮する必要があります。上顎では歯茎の高さや形状、硬さなどから難易度を分類し、総入れ歯のサイズや形状が決定づけられます。特に上顎は噛んだ際の感触にも大きな影響を与えることから、慎重な判断が求められます。上顎と下顎の両方の総入れ歯を作成する場合には、2つの関係性も重要です。

模型や3Dデータを作成するなどして患者さん自身の歯が生えていた時をイメージし、上顎と下顎の動作や噛み合わせなどを考慮して適切なデザインを作り出します。簡単に外れないようにするのはもちろんのこと、綺麗な歯並びで審美性が高く、食べ物を噛む際にはスムースに動き、会話をする際には正しい発音ができるほか、関連する組織が円滑に動いて自然な表情が作られることも大切です。歯や歯茎、筋肉など口腔内で行われる全ての動作が適切に機能することも想定した難易度の分類を行うことで、患者さんの生活の質を高められる高精度な総入れ歯を作成することが可能です。

治療やリハビリテーションの要素もある

総入れ歯

総入れ歯は1度作成すればそれで終わりではなく、治療やリハビリテーションを目的に用いられることがあります。既に使用している総入れ歯に何らかの問題がある場合に、食事の際に噛みにくい、会話の際発音がしにくいなどの不具合が生じるケースもありました。それにより顎の骨や歯茎、筋肉などに影響を及ぼすことから、新規に総入れ歯を作成しても改善されないこともあります。そんな時には別途総入れ歯を用意して、治療やリハビリテーションを行う方法もおすすめです。

現在使用中の総入れ歯の問題がごくわずかだった場合には修理を行い、それを治療用の総入れ歯として活用することがあります。ただし、この方法では元の総入れ歯に不可逆的な加工を施すため、後から元に戻すことはできません。そこで使用中の総入れ歯を複製し、一方に加工をするという方法もあります。これならば同じ総入れ歯が2つあることで一方には大幅な加工を施すことが可能なほか、もしも以前の総入れ歯の方が調子は良かったとなれば保管しておいた一方を再び使用することができます。

2つあることで比較検討することも可能で、治療方法を判断できるのもメリットです。既存の総入れ歯に問題点が多い場合には、新規に作成するのが得策な場合もあります。通院の手間や時間はかかってしまうものの、合わない総入れ歯を使用し続けるよりも遥かに生活の質は高まります。これらの総入れ歯のみの治療でも解決が難しい場合には、インプラントを併用するケースも増えています。顎の形状や歯茎の状態などに応じて総入れ歯の範囲を小さくして負担を減らすことができます。

総入れ歯の豊富な種類と気になる費用

総入れ歯

総入れ歯を装着することで生活の質が高められると理解しつつも、その選択肢に迷ってしまう場合があります。従来型の素材の他にも様々な最新鋭の素材を採用したものが台頭しているほか、保険の範囲内での治療に加えて保険外の治療も選択肢となっています。保険の範囲内の治療では総入れ歯の義歯床にレジンを使用するのが主流で、加工が比較的簡単かつ軽量でありながらも一定の強度があるだけではなくコスト面でも有利です。

また、少しコストは上乗せになりますが金属を使用したものもあり、レジンと比較して熱伝導率が高いことから食べ物や飲み物が口腔内に入った際の温度がよりリアルに感じられます。これらの素材を使用した総入れ歯は上顎または下顎のどちらかでおおよそ1万円から1万5000円程度で、最も普及しているタイプです。一方、より質の高い生活を求めて保険外の治療方法を選択する方も増えています。義歯床の素材には医療用のシリコンを採用し、柔軟性が高くフィットし、色も自然な歯茎に近いように再現されています。

その上に載せる義歯にはセラミックを使用し、より耐熱性や耐久性も高く長期にわたって健全性を保つことができます。歯茎と義歯床を固定するのも素材との吸着に頼るだけでは外れる可能性があることから、医療用のマグネットでしっかりと固定するタイプもあります。これらの保険外の総入れ歯は素材や工法が多岐にわたりますが、50万円から60万円を超えるのが相場です。費用面では少なからず負担となりますが、より高いクオリティを求めて選択する患者さんが増えています。

総入れ歯は高い精度で型を取れば良いのではなく、周辺の筋肉組織なども考慮した難易度の分類を詳細に行うことで高品質を実現していることが分かりました。さらに従来型の保険の範囲内の治療だけではなく、保険外治療に視野を広げれば多くの選択肢が存在しています。自分で噛んで食べる喜びやスムースな会話などを実現できると考えればコストパフォーマンスは良く、今後の有力な選択肢となりつつあります。